• 2011.09.11 Sunday
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NTNU(2)
9月24日から5泊でストックホルムとオスロ出張をしてきました。研究室の中村先生と学生6人と合流です。29日から3日間はトロンハイムに来ていただきました。それらの話はおいおい書いていくことにして、トロンハイムでの生活について書いてみます。

こちらの人は、朝は多くは8時始業でやや早めですが、終業はたいていは3時半から4時半です。なので、夕方のラッシュ(総じて朝ピークより混雑)も3時過ぎから始まります。というとなんだかぜんぜん働いていないように見えますが、そのかわり昼休みは短く、11:30から30分というのが通常のようです。もっとも、研究者や院生は夕方まで残っている人が多いです(といっても18時くらいまで)。

こうなると、食事のサイクルも変わってきます。大学では、前にも書きましたが、私の周りでは、お昼は手製のサンドイッチ(適当にハムやチーズを挟んだだけのもの)をもちよってさっと食べる人がほとんどです。ノルウェー人によると、スウェーデンは昼は暖かいランチ(ホットランチ)が一般的で、ノルウェーはコールドランチ(パンとハムなどのサンドイッチ。高級になるとサーモンやシュリンプサンドになる)が一般的、といいます。たしかに、街でお昼を食べようとすると、ノルウェーでは暖かいものを置いているところは少ないです(ピザやハンバーガーくらい)。パンもチーズもハムも、安宿の朝食でもスーパーのものでも、日本で言えば中の上くらいで結構おいしいのですが、やや単調ともいえます(幸いまだ飽きてません)。

中村先生と学生6人で大学訪問をしたときには、学食で一緒にお昼を食べました。なんだか横国の二食で食べてるみたいだねえ、といいながら。写真のものは一人約900円の定食です。高い!ともいえますが、ノルウェーの物価ではこれでもかなり安いほうです。肉もたっぷりでやわらかく煮込んであって味もまあまあ。パンとサラダは取り放題なので、日本でこれを食べたら1000円くらいにはなるでしょう。大学の人は、「あれはStudent foodsだよ」などといっていましたが、そう言っている大学スタッフの普段の食事の方がなんだか質素のように思えるのが、ちょっとおかしいです。

学食

で、これはお昼と書きましたが、学食のメニューでは「ディナー」です。書いたとおり、ノルウェー人はお昼にこのようなものは普通は食べません。これは大学でのミーティングのあと14時くらいだったので、既に夜メニューが提供される時刻になっていたからです。ただ、この「ディナー」を食べたくても、大学の食堂は17:30で終了。金曜日は14:30終了です。大学の外で、それなりのものを一人で気軽に食べれるところはなかなかないので、この食堂に17:20頃に駆け込むのが日課になってきました。今日は金曜日(いま16:00)。さて、今夜はどうしますか。。。

金曜日も午後になると、大学のオフィスも週末気分になってきます。14:00頃、学生がワッフルを焼いているのでどうぞ、と誘われていってみると、学生やスタッフが廊下のキッチンのコーナーで、ワッフルとコーヒーを楽しんでいます。専用のホットプレートがあるんですね。私ももちろんいただきました。金曜日の午後は時々こんなことをするのだそうです。もちろん忙しい人は仕事をし続けていますが、学生も教員も事務職員も、また分野に関係なく、さっと集まって雑談などをする、なんて環境はいいですね。でも、これも彼ら彼女らは別にヒマな訳でものんびりやなわけでもなく、うまく時間の都合をつけて休みがてらみんなで集まるような機会を意識的に作っている、またそのような機会を大事にしている、ということなのでしょう。

ワッフル

もっとも、こちらの人は「おやつ好き」というのもあるのかもしれません。いろいろなオフィスにヒアリングに行きましたが、ほとんど必ず、コーヒーマシンとお菓子や果物が置いてあるリフレッシュメントコーナーがあります(日本だとこれが、自販機脇のベンチとか喫煙コーナー、ということになるのでしょうか)。ミーティングでも、もちろんこちらが客人として招かれていることもあるのでしょうが、机の上にはお菓子などがおいてあります。ある場所にヒアリングに行ったところ、そこの方(けっこう上の人)の奥さんが前の日にわざわざ焼いてきたというパイを出していただき、一同感激をしたこともありました。

パイ

まだ滞在2週間ですが、こちらの大学や訪問先の方々が、一見のんびりと、実際にはハードに、でも余裕を持って仕事をしているのが、印象的です。
オスロの”City bikes"
 時は戻って、今度は9月29日に訪問したオスロのCity bikesについて書いてみます。ストックホルムとは違って、今度はただ乗っただけではなく、Clear Channel社への訪問を行いましたので、いろいろなことが分かってきました。同行した青木先生、大森先生はまさにこれがご専門なので、私が以下にいろいろ書くのもやや恥ずかしいのですが、まあ素人+アルファの感想ということで。

まず、自転車の使われ方。
前のコラムで、ストックホルムでの自転車の使い方は、少し長い距離を自転車道を使って原付のような感覚で使う(ように見える)、と書きました。オスロでは、専用自転車道をレーサーのように駆け抜ける、というのではなく、日本の街での自転車のマナーがよくなったというような走り方をします(専用の自転車道もストックホルムよりは少ないです)。といっても、駅端末利用というのはあまりなく、家の近所でのもうすこし短距離のちょいのり風に使う人が多いように見えます。都心のサイズも小さいので、都心を自転車で走っている人も、服装などから見てその近くの人のように見えます。まちによって自転車の使われ方は明らかに大きく違うのですが、そのあたりの違いが分かるような調査データはおそらくないので(ご存知の方教えてください)、このように感覚でしかものが言えないのがもどかしいところです。

ストックホルムの項では、まちでの自転車の使われ方とCity bikesで想定している使われ方がどうも異なっているようだ、と書きました。これも、City bikesが新しい自転車の使い方を提案できてそれが市民に浸透すると、よりpopularになるのでしょう。一方オスロは、上記のような自転車の使い方を既にしているせいか、City bikesとまちの相性はいいように見えます。いたることろでCity bikesを使っている人を見かけます。でも自転車ラック数は、ストックホルムのせいぜい1.5倍程度です。

みなと

実際に、Clear Channel社の方とともに十数人で市内を移動しました(ここで中村文彦先生が自転車に乗る姿を私ははじめてみることになります)。このあと、自分でも使ってみましたが、ストックホルムもオスロも、自転車の保守状況は良好でした。

中村先生

ClearChannel社以外にも、JCDecaux社などが、この数年でこの種のシステムを多くの欧州の都市で導入中です。そのそれぞれの長短は専門家の解説に任せることとして、このシステムでは、とにかく、自転車(軽くてシンプルで使いやすい)、貸し出しシステム、ラックの構造(シンプルさ)など、ずいぶん進化をしているように感じました。登録管理の方法、行政との協議内容、自転車の運用と保守、広告の運用などについては、かなり経験をつんでいるように見え、ビジネスモデルとしてほぼ確立しつつあるともいえます。

一方、ストックホルムとオスロの違いで書いたように、交通という立場から見たときには、自転車がどのように使われているのか?利用者はどこからきたのか(公共交通からの転換なのか、車からか、保有自転車からか、はたまた新規か)、既存の交通モードとの役割分担を都市交通としてどう位置づけるべきか、という議論や分析をもっとしたいですし、また知りたいところです。このあたりは、すくなくとも私の感覚では、両都市ともこれから、と見えます。とにかく、システムをうまくまわすことが今までは大事だったでしょうから。

日本に入れるのは法令上の難しさもあるでしょうが、どのような使い方を想定するかを、まずは都市側がこの種の自転車をどう明確に位置づけるか、利用者にどういう使い方を提案できるか、がカギなのでしょうね。そのためにも、上記の分析が必要で、ここが交通の研究者の出番なのでしょう。

他の都市で使ってみれば、この私の感想もまた違ってくるのかもしれませんが、まずは2都市を数日見た感想ということで。
トロンハイムのbike lift
自転車つながりでもうひとつ。

トロンハイムには、「世界初」という触れ込みの、自転車リフト"bike lift"があります。これは1993年に設置されたもので、もう15年たっています。リフトといっても自転車を載せるわけではなく、足を乗せるステップが地面のレール上を上っていくので、自転車に乗ったまま、その動くステップに足をかけて坂を上っていく、というものです。観光パンフにものっている「有名」なものですが、さて。

bikelift1

さっそく到着2日後の9月20日に行ってみて、坂道の下で20分待ったものの、利用者は現れず。
あらためて、9月30日に中村先生と学生とで見に行ったときに、City bike(前述のもの。トロンハイムにもあります)を借り出して、リフトの利用カード(約2000円のデポジットで借りられる)も手に入れて試してみるも、よく分からずステップだけが飛び出して止まってしまい断念(壊したわけじゃないですよ)。

さらに10月1日に行ってみると、ちょうど利用者がいるではありませんか(ラッキー)。

bikelift3
左足を動くステップにかけて、自転車で上がっていきます。はやさは分速120mくらいでしょうか。

bikelift2

ステップはこんな感じです。バランスを取るにはちょっとしたコツが要りそうです。
それにしても、我々8名のカメラの放列の中で上っていったご婦人には、ちょっと申し訳なかったです。(ポーズをとってくれましたが)。

勾配は8%くらいで距離も100mくらいはあり、ちょうど、中心市街地に入る橋と丘の上の住宅地とを結ぶ通りにあるので、通過する自転車も多いです。カードもデポジット制ですから、もっと使われてもいいようにも思うのですが、自転車でがんばって上って行く人が何人もいます。使っているのを見たのはこの1人だけでした。

その前に、これについて大学の人(交通の研究者です)に聞いてみたのですが、誰一人として使った人はいないし、「まあどんなもんかねえ」といった反応です。いっぽう、設置者の市の方に聞いてみると、"It's popular"とは言うのですが、同時に”It's a good attraction" とも言います。追加の設置計画があるそうなので、市としてはそれなりの評価をしているように見えるのですが。。。

トロンハイムは人口16万人強の都市ですが、NTNUという有力大学もあるためか、試験的にいろいろなことを導入します(自動車の自動料金収受など)。また、NTNUの卒業生が技官でずいぶん市に入っているようです。国の出先機関(地方整備局のようなものですね)と市とも人事交流が随分あるようで、ここの交通行政はなかなか活動的に感じました。

このbike liftは、開発者のwebpageにいろいろ載っています。
http://www.trampe.no/english/

ここには利用者調査というのがのっていて、カード保有者が2500人というのだが、本当なんですかねえ(うそは書かないと思いますが)。

使い方にコツがいるようですし、日本でこれを公道に入れるのはちょっとどうかとは思います。でも、簡易なシステムで率直に面白いと思いました。
雨続き in トロンハイム
このところトロンハイムは雨続きで、気温も最高で10度くらいになってきました。今日も雨です。雨といっても、時々雲が薄れて薄日が差したり、というような文字通りすっきりしない天気です。晴れていたのは、私が到着した9月18日ころに2日間と、中村先生と学生6名が訪問した9月30日からの2日間だけでした。(訪問した皆さんは本当にラッキーでしたね)

Websiteでトロンハイムの天気予報を確認すると、不思議なもので、BBC,MSNそして日本気象協会など、サイト毎に予報がずいぶん異なっていて、現況の天気でさえ微妙にデータが違っています。特に日本気象協会のwebsiteの情報は、別の都市にリンクが間違って張られているのでは?と疑いたくなるほどで、どうもよくわかりません。

もうひとつ不思議なのは、websiteによると気圧が随分と低く、変動も大きいのです。たとえば、BBCでは、今日(5日)の気圧の予報は977ヘクトパスカル、明日(6日)は1001、7日は1013ヘクトパスカルという予報になっていて、日本の感覚では大型台風が来襲しているような数値ですが、実際の天気も予報も、ずっと「風弱く、曇り一時雨、ときどき日が差す」となっているだけです(いま、日がさしてきました)。北海沿岸あたり特有の気象なのかもしれません(調べてみます)。

晴れていると、街もとても美しく映えるのですが、

大聖堂
↑ 左奥は、ノルウェーでも一番大きいという大聖堂です。

雨になるとこんな感じです。これは、大学の土木工学科の建物から撮った写真です。
紅葉もだいぶ深まってきました。
雨のキャンパス

いま大学に来ていますが、日曜日で当然まわりは誰もいないので、滞っているメールに返信したり、研究費申請書類を書いたりしていて、まさに日本にいるような感じです。



公共交通とベビーカー

何日かぶりにニュースサイトをみたらすごい円高になっていて驚きです。この週末を挟んで15%近くノルウェークローネが下がったので、こちらでの生活を考えれば「朗報」ではあります。いまの宿は基本的には前払いなのですが、先週オスロから戻ってきてチェックインしたときはバタバタしていたのでその際には宿代を払わずにいて、実はそのまま7日間たっています。払わずにいて結構トクしたことになります(物価が高いところにいると、セコくなってしまいよくない)。

もう今週はどこにも遠出せずに大学通いなので、先週・先々週のストックホルム・オスロ出張でのことなど、学術的な話よりは、その周辺領域のようなことを、自分の記憶の整理の意味でぽつぽつ書いていこうと思います。


ノルウェー、スウェーデンとも、町を歩いていると、とにかくベビーカーが目立ちます。ベビーカーは日本のものより長さ・幅も車輪も大きくしっかりしたものが一般的なので、なおさら目に付きます。出生率は日本より高い(2くらい)とはいえ、この密度には少しびっくりします。たとえていえば、街も電車・バスの中も、アカチャンホンポや西松屋の店内のようです(分かりますかね?)。でも、乳幼児の人口比が3から5%だとして(けっこう大きい子もベビーカーに乗ってます)、その割合がそのまま街を歩く人の構成比と考えれば、この密度はむしろ当たり前といえるのかもしれません。

ベビーカーで外出しやすいインフラが整っているからだ、というのは確かにそうなのですが、インフラだけでこの違いは説明できない気がします。それ以前に、子供を持つ親の外出習慣というか外出の考え方がそもそも違うのでしょうか。私が帰国する頃には長男もベビーカーに乗れるようになっているので、この習慣の違いが何なのかをこれから身をもって考えていこうと思っています。

で、そのインフラですが、ストックホルムの地下鉄駅はエレベータは確かにありますが、ベビーカーをそのままエスカレータに乗せる人の方が多いです。スピードも日本より速いので危ない気もするのですが、気にせずガンガン行きます。エレベータやエスカレータは日本もほぼみんなありますから、特に違いはありません。

というわけで、インフラがものすごく整っている、というわけでもありません。

旧型の郊外電車の入り口です。ベビーカーマークはあっても段差がありますが、、、。
乗るとき降りるときは、周りの乗客が手を貸します。
ベビーカー入り口

スロープでがんばって押して上がってください、ということですね。

ベビーカースロープ


バスのほうは、こちらは基本的には前乗りのようなのですが、車椅子・ベビーカーの人には、中ドアの外側に専用ボタンがあります。ベビーカーが乗ってきても、運転手も周りの乗客も親も慣れたもので、ベビーカーが乗ってくるからといってそのために停車時間が長くなるという感じはありません。

バス入り口

要は、周りの乗客もてきぎ手伝ったり譲り合ったりすることが前提のインフラになっています。このような人々の習慣も、広い意味でのソフト的インフラということになります。全てをハードのインフラと乗務員・駅員の対応で解決しようとすると、時にものすごくコスト高になったり、大仰な設備になってしまいます。

日本も、まだハードのインフラ整備を進めていく段階にありますが、そればかりに注力していると、ハードの整備の進行が、逆に市民の側のいわばソフト的インフラの力を弱めてしまう、ということもありうるシナリオなのかもしれません。一方で、人々の習慣は意外とすぐ変わるもので、たとえばエスカレータでどちらかの側に立つ習慣(やめてもいい気もするのだが)も、数年くらいでいつのまにか定着したような事例もあります。このような、習慣・意識(ソフト)とインフラ(ハード)との相性というか相互関係なんてものも、重要な研究テーマではあるんですけどね。

歴史の長いトロンハイム

トロンハイムは実はかなり歴史ある街です。11世紀に街がつくられて、中世の頃は首都であったこともあります。このまわり100km四方には街らしい街はないようなところなのですが、海が凍らないこともあって昔から栄えてきたといいます。したがって、人口は16万人ちょっとですが、大学もあって、大聖堂もあって、王宮まであります。

ということで、いくつか街中の写真を。

歩行者道

 中心部は、歩行者専用道ネットワークの商店街になっています。郊外にも、大きなショッピングセンターや巨大なIKEAなどがあるので、さすがに中心部には、電気店や家具店などはありません。
それでも中心部は、これは土曜の午後の写真ですが、かなりの人です。中心部は例外なく駐車料金がかかる(1時間400円くらい)にもかかわらずです。大聖堂もあるような長い歴史がもつ町の文化の蓄積がなせる業なのでしょうか。
カフェもたくさんあります。でもいわゆる全国チェーンのコーヒーショップ(スタバなど)はほとんどなく、どれもみな地元のやや素朴なカフェです。カフェや喫茶店の数は、街中を人が歩いているか(買物などでそぞろ歩いているか)は大きな相関があります(と私は思っている)が、ここも然りです。とにかく、小さな町ではあっても、田舎臭いという感じがしないのが、この町に来たときの驚きです。来るまでは、「極寒の北の街」ということで、北海道の地方都市のような、開拓地ふうのやや殺風景な街並みをなんとなく想像していたので。

倉庫群

中世(!)の木造の元倉庫群と、左奥に古い跳ね橋、中央右は大聖堂の塔です。

中心部でも、近代的な建物はけっこうあります。でも石造りの古い建物、というのはそれほど多くはなく、中心部でも2階だての三角屋根の伝統的な木造の商店が続いています。ヨーロッパは石の街、なんてひとくくりにしてはいけないということですね。

外側

こんな2階建ての木造の商店が続くような町並みなのですが、上の写真は実はこれは、中心部の再開発ショッピングセンターの外側で、奥に4階建てのガラスの建物がありますが、それがショッピングセンターの内側です。内側から見ると↓こんな感じです。

内側

冬は寒いので、このようなショッピングモールは好まれるのでしょう。でも人に聞くと、真冬でも街を歩いている人は結構いるのだそうです。

ちょっと郊外に出ると、木造の品のいい一軒家の住宅が並んでいます。築50年以上の家なんてのはざらです。ヨーロッパの町も郊外に出ると、ちょっと雑然としているというか、汚い、すさんでいる、というような所があるものなのですが、トロンハイムは、郊外も、一軒家や中層住宅群が木立に囲まれていて品がいいのも驚きです。

もっとも住宅価格は高く、中心部のウォーターフロント再開発地区の新しい中層住宅で、坪当たりでは横浜のみなとみらいあたりとさして変わりません(さすがに東京都心よりは安いようですが)。ひとりあたりGDPが日本の2倍なのですから、それだけ家にお金をかけるわけだ、ともいえます。



これは、郊外(といっても中心部から2kmくらい)のテレビ塔の上からのものです。奥が中心街です。手前側の一戸建ては、1930年代くらいに開発されたところです。一区画が100坪くらいで、華美ではないですが、住宅地全体の品があります。
東京都市圏との比較はあまり意味がないとしても、日本の地方都市の住宅地(「住宅」ではない)で、本来はこれくらいの質の場所がもっとあってもよいと思うのですが。

災害復興とまちづくり

週末をつかって、3泊で遠出をすることにしました。最初の行き先は、オーレスンという人口4万人程度の港町です。トロンハイムから南西へ直線距離で250kmくらいです。トロンハイムからは、バスだと半日以上、船はまる一日かかります。ノルウェーの自然景観を楽しむなら陸路・海路はうってつけで、少し心が動きましたが、さすがに速さを優先して飛行機です。これだと40分ほどで到着です。小型のプロペラ機かと思ったらボーイング737-700で、ほぼ満席。

オーレスンは1905年に大火で街が全て焼け落ちたあと、その復興過程で、街路を広げただけでなく、街の建築物ほぼすべてを、煉瓦や石造りのアールヌーボー様式で再建した街です。ここに来たかったのは、大火からの復興の歴史、建築物、そして現在にそれをどう受け継いでいるかを見ておきたかったからです。

街は、こんなです。
オーレスン1

これは港の脇で、左の建物が、アールヌーボー博物館で、復興過程や建築物デザインなどの解説があります。別にこの一画だけこのような建物群があるわけではなく、中心部全体がこんな感じなので、なかなか壮観です。

オーレスン2

ここは住宅地です。商店街では、一階はガラス張りのショーウインドーになっていますが、住宅地になると、入り口のドアなどもたぶん当時のままなのでしょう。よくみると、壁面にはいろいろな彫刻、バルコニーには曲線で構成された欄干などがいたるところの建物にあります。いつもは「町並み」を見ているので、街路と並行方向の景観を見ていることが多いですが、建築物を見るには、街路と垂直方向:建物の正面から見ることになるので、私の普段の街歩きとは少し違ったスタイルになりました。

大火の後、街割りを変更して街路を広げる、というのはよくありますが、ここまで町全体の建築物を同じデザインで(それも当時の最先端?のデザインで)一気に造り上げてしまう、という例は意外と少ないと思います(日本でも、蔵造りの町並みなど、部分的にはありますが)。さらに、ここはそれがほぼ全て残っていて(まあ100年くらいですから)、観光用ではなく通常の生活に使われているので、そのような街を歩くのはなかなか貴重な経験でした。

街の中も、港の周りを埋め立てて道路を新設したり(もとの大通りは歩行者専用の商店街になっている)、街のほぼ真ん中の当時は何もなかった(当時の地図では空白になっていた)一画にショッピングセンターと近代的な10階建てくらいの建物が建っていますが、それ以外は復興当時の地図とほぼかわりません。といっても、街の発展が停滞しているわけではなく、土曜日でしたのでそれなりに人通りがあります(観光客は、いまはほとんどいませんでした)。北の海の港町ですが、最果て感もわびしさも街に全く感じないのは、どの建物もよく手入れがされていることも大きいのでしょう。朽ち果てていたり、壁の塗装がはげかかっていたり、などというような建物はほぼ皆無なのが印象的です(なので、テーマパークの中の街にすら見えてしまうほどです)。

オーレスンもこの周辺100kmくらいには大きな街はなく、氷食によりつくられた島や半島が複雑に入り組んだ地形のなかにあり、中心街も3つの島にまたがっています。まわりは荒涼とした(晩秋なので)風景が広がりますが、街中だけがとても明るい雰囲気なのが不思議です。
さらに、もうひとつおどろいたこと。空港は別の島にあって、街とは間に1つ島をはさんで、2つのかなり長い海底トンネルで結ばれています。かなりお金がかかっているはずです。ここだけでなく、ノルウェーは人口密度はものすごく低いですが、地図を見ると、人が住んでいるところには、谷の深いフィヨルド地形のなかに、あちこちに長大な山岳トンネルがあります。いまの日本だったら、タヌキしか通らない(ノルウェーならキツネですかね)などと揶揄されかねないところですが。公共投資に対する議論、とくに地方部に対するそれがどうなのか、決定プロセスがどうなっているのか、滞在中に知っておきたいところです。

また、特に夏は、フィヨルド観光もかねてオーレスンに行くのは、純粋に旅行先としてもお勧めです。機会があれはぜひご検討を。

トラム建設中 in ベルゲン
オーレスンの次は、これまた飛行機で40分ほどのベルゲンです。ノルウェー第2の都市です(3番目がトロンハイム)。山が海に迫った港町で、人口も郊外部を入れると30万人くらいでしょうか。

ちなみにベルゲンはとても雨の多い町だそうで、ついでに風も強い日が多いそうです。この日も、日が差したかと思えば横殴りの雨が降ってきたりします。こんなとき、傘を指している人はほとんどなく、パーカーをかぶるか、その辺で雨宿りをしていたりします(ずっと強い雨が続く、なんてことはなく、たいていは通り雨だそうです)

そんな気候条件が関係するのかしないのか。ちょっと面白いアーケード?が。

歩行者道路

中心部には大きな歩行者専用道路があり、その両脇にはデパートや商店が並びます。(上写真)
そこでは、ガラス屋根のひさしというか、日本風に乱暴に言うとアーケード的な屋根が建物についています(写真右側のほうにもあります)。これが連続しているので、突然の雨でもOK。歩行者モールの開放性、風雨を避ける機能、そして建物のデザインとを両立させているちょっと面白いデザインです。(さらによくみると、柱がどれも微妙に形が異なっているのが、またアクセントです)

ここから数分歩いた先では、LRTの都心側終着駅が目下建設中。

ベルゲンLRT

まずは約10km程度の1路線が現在建設中で、これがさらに空港まで延伸する計画もあります。
建設財源の一部は、都心流入車への課金(toll ring)の収入も含まれています。ちなみに、トロンハイムもベルゲンと同様に、世界でもほぼ最初に都心流入課金とその自動収受を開始しましたが、トロンハイムでは制度は現在は廃止され、電子課金の設備も撤去されてしまいました。ベルゲンは、LRT延長の財源にするため課金期間の延長が決まっています。

この写真は、中心部の公園脇ですが、他の区間では軌道敷工事が進んでいないような所もあります。2010年開業予定です。
フィヨルド周遊(1)
ベルゲンからは、フィヨルド周遊をしてオスロに向かいます。一般の列車・バス・船を乗り継いでいくもので、セットの切符を旅行会社が販売しています。
予定コースは、ベルゲン(ノルウェー国鉄)→ヴォス(路線バスで峠越え)→グドヴァンゲン(船でフィヨルド)→フロム(フロム鉄道:急勾配で山の上まで)→ミュルダール(ノルウェー国鉄)→オスロ

フィヨルドの湾や深い谷、けわしい峠越えなど、自然のつくる造形の中を進むすばらしいコースです。ちょうど黄葉の盛りで、山上はうっすら雪がかかっていて、あいにくの雨と霧の中でしたが、楽しい周遊でした。
フィヨルド2

細長く深い谷が続きます。湖や川のように見えますが、当然ながら「海」です。

フィヨルド3

フィヨルドと交差する谷も、U字谷が奥へと続きます。この写真は珍しく集落になっている場所。
(最近まで、アクセスは船だけだったようです)


こういう場所ですから、普通の旅行者の目で見れば「手つかずの自然の風景はすごいねえ」「自然の力は偉大だ」となるわけで、またそれが売りのコースでもあります。でも、原始のままの美しい自然だけでは、探検家はともかく旅行者をひきつける目的地とはならないわけで、ここが「観光地」として成立して、それが続いていくまでには、多くの歴史の積み重ねがあります。ここソグネフィヨルドの場合は、ちょうど、オスロとベルゲンを結ぶ街道筋だったこと、イギリス人の金持ちが鮭釣りにやってきたりして、それを受け入れるための小屋や宿ができたこと、さらにヨーロッパの王族が泊まりに来るようなホテルができたこと、船や鉄道の整備で周遊が可能になったこと(トーマスクック社<知らない学生(うちの学生のことです)は調べること>が早くも周遊ツアーを売り出した:ここまでで20世紀前半)、などというわけで、風景とは裏腹に、観光地としてかなりうまく「デザインされてきた」場所というわけです。
「観光開発」などというと何か自然破壊とか、言葉自体に少しマイナスのイメージがありますが、もともとの資源をそのまま生かして快適に旅行や滞在ができる広い意味でのインフラの整備や、すごし方の提案をすることです。とくに自然を主体とする由緒ある観光地には、かならずその「観光地」を育てるためにリードした人や企業があり、そのような経緯の積み重ねがあるところほど、またそこの「自然」も映えてくるのだろうと思います。

前述の周遊切符も、その意味で歴史があり、なかなか上手な売り出し方です。日本の多くの国立公園などの観光地でも、車を持たずとも周遊できて楽しめるような売り出し方に、もっと工夫がいるように思えます。台湾の観光客が日本の観光地でレンタカーを借りれるようにする(以前は、台湾の運転免許では日本で運転不可だった)なんてことも大事は大事なのですが、団体ツアーは嫌だけどレンタカーを借りるのもどうも・・・、というような潜在的マジョリティ(とくに外国人)をもっとひきつけることは必要に思います。

もっとも、ほんとうにフィヨルド観光をするなら、夏に何日か滞在するのが楽しいのでしょうが。
フィヨルド周遊(2)

もうひとつ、ここの重要な観光資源は、フロム鉄道です。
http://www.flaamsbana.no/jap/Index.html

湾奥のフロム(海抜2m)から、オスロ・ベルゲンを結ぶ鉄道駅ミュルダール(海抜865m)までを、約20kmを40分かけて走ります。途中の風景が美しいのはもちろんですが、最大勾配5.5%がずっと続くことや、途中に二重のヘアピンカーブ(鉄道だとループやスイッチバックが一般的ですが、ここではトンネルがヘアピンの線形になっています)があり建設には技術と時間を要したことなど、鉄道技術的にも特徴的なところです。
フロム
写真はフロム駅(フィヨルド湾側)です。U字谷の底にあります。雨なので、山の上からいく筋もの滝が流れ落ちています。日本だと土石流の危険をすぐ連想してしまいますが、ここは岩盤上で流れる土砂もないので別に問題はなく、これが雨の日の普通の光景です。

この鉄道は、いま年間約60万人が利用しています(ほとんどは観光客)が、70年代までは年間20万人ほどでした。80年代から増え始めるのですが、これには先のコラムの周遊切符の売出しなども大いに関係しています。
ここはもともとは国鉄の1支線で、以前はサービスの縮小(冬期運休など)や最悪は廃止も考えられたそうですが、1998年に民営化され、いまは地元の観光開発会社が経営をしています。地元の観光企業によるホテルやレジャー活動との一体運営のため、来客数の増加に大きく貢献したといいます。

地元の観光開発会社により既存の交通機関を経営する、というのもあるわけです。日本では歴史的には、交通事業者が観光開発を行ってきた地域が多いですね。そのようなケースでも、現在では実質的には観光開発が主・交通は従というような企業に変化しているとも言えますが、そのようなケースでも、その交通については元気がないところが多いのが気にかかります。

もうひとつ面白いのは、民営化して観光開発会社が買い取ったのですが、運行や保守はひきつづきノルウェー国鉄が行っていることです。公共交通で「民営化」とか「移管」というと、もとの企業体は一切そこから手をひく(というか、手を引くことが目的で移管をする)というモデルが日本には多い(多すぎる)ですが、公共交通の運営形態にはもっと多様になっていいと思います。都市交通だけでなく、観光交通でも。

で、楽しみにしていたフロム鉄道ですが、直前に運休となってしまい、急遽手配されたバスで移動することになってしまいました。この鉄道に並行するバスが通れる道路はないので、100km以上はなれた山のふもとの駅(Aal)まで連れて行かれました(オスロ行きの列車に先回りしたような形になった)。乗車予定だった、ミュルダールから先のノルウェー国鉄最高地点の通過(ここも土木技術としては歴史に残る区間です)もパーになり、天気に続いてややケチのついた周遊となってしまいました。

もっとも、この代行バスからの景色は、鉄道からよりも雄大だったかもしれません。中心線もないような一本道(おそらく、電源開発だけのために造られたような道)を、誰一人すんでいないような山中をいき、ときにはヘアピンカーブのトンネルや4kmもあるトンネルなどを通っていきます。そして、そこに突然、大きな送電線やダムが現れたりします。途中ですれ違った車は数台。こんな経験も運休のおかげ、といえば言えます。

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