スカイトレインのChong Nonsi駅から、BRT(Bus Rapid Transit)が開通しています。すでに、スカイトレインなどの地図にも表記され、電車内でもBRT乗り換えのアナウンスがありますが、おそらく正式開業というわけではなく、いまだに運賃無料での「お試し期間」です。
Chong Nonsi駅近くのターミナル。両端駅の乗車ホームだけは、ガラス張りで空調付です。
車体デザインは、正直なところ、垢抜けているとは言えません(中国風?)。
車両の床は高く、ホームをかさ上げしています。ドアはホーム高にあわせていて、車内の床はフラットです。ドアは両側にあります。
各停留所では、バスとホームとのギャップはほとんどありません。ガイドウエイなどがあるわけではなく(※)、縁石にあわせて運転手はミラーを見ながらゆっくりと、ホームにバスをまさにすりつけるようにして停車します。(実際、バスの車体には少々擦り傷があります)
(※後日コメント:ガイドウエイは、実際はきちんとあります。写真にも写っていて確認不足でした。考えてみれば、ガイドがないのにギャップなしでホームに擦り付けられるわけないですよね。)
バスの走行空間は、基本的には縁石で区切られていますが、途中の立体交差部では縁石がなくなり、BRT とHOV(High Occupancy Vehicle)の共用レーンになります。HOVは3人乗り以上が対象です。乗車したときは、特に道路は混んでいなかったので、縁石仕切りなしのHOVとの混成レーンでも問題ないように見えましたが、混雑時はうまく機能しているのでしょうか?
今回の導入区間は、バスの需要はそれほど卓越して多いわけではなく、また道路混雑もひどくはない場所とみました。BRTの必要性という意味ではそれほど大きくはないのかもしれませんが、技術的な面や運用のノウハウの蓄積という点では、BRT適用第1号としてはいいフィールドなのかもしれません。
翌朝が早いので、BRTに往復乗車したらすぐにホテルに戻り、ホテル内の中華料理店で夕食を済ませました。500バーツ(1700円)分のホテル内クーポン券をもらいましたが(そんなことより宿泊料を安くしてほしいが、これが最安プランだったので仕方がない)、マッサージを頼むのもむしろ面倒だし、夕食くらいしかクーポンの使い道はありません。ホテル内だし、どうせ高いだけで味はたいしたことないだろう、という想像は幸い外れて、あわびのだしのあんかけ焼きそばは、思いのほか美味でした。味付けが薄めで、味の素っぽくないのもたいへん結構。海外、とくに欧米に行くときには、よほどのことがない限り中華料理や日本料理は食べませんが、東南アジア、とくにタイは別で、中華料理は時に本場以上に洗練されていておいしいです。
・リスボン→オビドス(8:00発9:00頃着)
バスは、リスボンのカンポ・グランデ発です。乗り場に全く案内がありません。「地球の歩き方(≒迷い方)」の記述も間違っています(「右側」でなくて「左側」!そもそも、東西南北でなくて左右で記述するセンスを疑います)。
乗ってしまえば快適。高速道路は勾配(6%以上?)とカーブの連続です。オビドスまではノンストップです。
昔ながらの風車と現在の風力発電の風車が並存。
・オビドス
1キロ四方くらいの城壁に囲まれた街です。9時過ぎだと観光客は誰もいません。街角のどこを切り取っても絵になります。どの店も準備中。道は掃除中。
帰るころになって、学会主催ツアーの面々と遭遇。でもツアーでは、路地裏を歩きつくすなんてワガママはできません。このころには観光客でいっぱい。観光客であふれる街角も、それはそれでひとつの雰囲気ですね。
・オビドス→ナザレ(11:15発。カルダス・デ・ラニーニャ乗換えで、ナザレ12:25着)
オビドス発ですが、バス停には時刻表も何も張ってありません。そもそもここが乗り場なのかも不明。多くの人は、車か観光バスで来るのだと思いますが、路線バスでまわる観光客もいると思うんですがね。でも発車時刻が近づくと人が集まってきたので一安心。ここからはローカルバスです。
途中のカルダス・デ・ラニーニャでの乗り換え時間は、ダイヤ上は10分。でも、まったく渋滞もしていないのに到着は9分遅れ。乗り換え先のバスの乗り場が果たして見つかるかどうか。到着したバスの前に止まっていたバスをつかまえると、これがナザレ方面行き(表示はない)。我々が乗ったらすぐ発車。あぶない、あぶない。結果としては、とても効率的な乗り換えではありましたが。バスターミナルの写真は撮れずじまいでした。
路面電車はこんな感じです。急勾配、狭幅員の連続です。
城から旧市街を。これで夕方6時半です。学会関係者にたくさん出会います。
路地歩き。とにかく坂が多い街です。少なくとも明るいうちは危険は全く感じません。さすがにこんな場所では、学会関係者と思しき方々には全く出会いません。リスボンは、路地歩きが安全で楽しい大都市ですが、リスボン市はそれをまだ上手には生かしていないように思えます。たしかに安全なのですが、ごみや落書き、朽ち果てつつあるビルなどがところどころにあって、観光地としては、まだ万人向けではありません。でも、ユーロ統合以前にリスボンに来たことがあるという小池先生によると、当時の路地裏はとても怖い感じで、これでもかなり変わったそうです。
セグウェイに乗っている警官を何度か見かけました。
ポルトガルは物価が安く、普通のレストランでは、10ユーロでおなかがいっぱいになります。味もなかなかです。さらにホテルの朝食もとても充実しているので、常に食べすぎ状態です。ただ幸い(?)なことに、学会会場の昼食はあまりおいしくないし、1回だけあった学会のディナーも、不味いし眠いしで、同席の方々には失礼ながら早々退席したりしたので、かろうじて少しはバランスが取れたでしょうか。
ところがひとつだけ困った(困っている)のは、ホテルのワイヤレスLANが、どういうわけか海外のサイトにつながらないのです。日本のメールサーバーへのアクセスもできないので、大学のアドレスのメールはまったく不可です。ロビーのパソコンは、日本語は打てないのは当然としてあきらめるとしても、日本語の表示もサイトによってはダメです(我が大学のサイトは、ひらがなのみ表示されるので、さっぱりわからない)。パソコンを新しくしたせいかもしれないのですが、プロバイダ側の問題のようでもあり、ホテル側ではどうにもならないようです。しょうがないので、g-mailアカウントを作ったり(Yahooはダメだが、GoogleはOK)、学会会場でネットにつないだり(セッションも出れずに)など、やや想定外の事態です。このブログをアップするのもちょっとめんどくさい。
それ以外は、きわめて順調。さらに天気もOK。昼間は外は暑いですが、朝夕はなかなか快適です。会場もまあまあ便利な場所だし、セッション会場が1フロアなので、移動がしやすく、いろいろな人に会えます。学会運営も意外とまともです(失礼)。
]]> 今回は、7月11日から16日まで、世界交通学会(WCTR )への参加で、リスボン出張です。
前にもブログに書いたことがありますが、成田空港は決して悪い空港ではないと思っています。アクセス時間が読めるし、都心発着なら1時間で確実に着く。チェックインも入出国審査も、荷物の受け取りも、待たされることは少ない。成田到着のときは、飛行機を降りてから電車に乗るまで、最速10分で行ったこともあります。空港内での手続きの時間を含めたトータルの所要時間では、世界的に比較してもそれほど見劣りしないと思います(もっとも、これは成田空港に慣れている人にとっての話で、外国人にとっての印象は違うとは思います)。さらに成田空港で気に入っているのは、出発の待合室のいたるところにあるパソコン電源デスクで、これは出発前にちょっとした仕事をするのにとても重宝しています。航空会社のラウンジ内は別として、一般の待合室にデスクがある空港は世界中でも意外と少ないのです。空港での一時利用インターネットの料金も、1日500円程度というのは、海外の空港に比べてかなり安いです。
このところ、自宅から成田へはリムジンバス利用が多くなりました。東京空港交通のウェブサイトでは、過去一ヶ月間のバス所要時間が、主要な路線について日別・時間帯別のグラフでわかるようになっています。これは、各車両に取り付けられたGPSのログデータです。今回のように日曜日の朝発の成田までの所要時間を知りたければ、過去4週分の日曜日のデータを見ればよいわけで、この情報はとても重宝します。たとえば、都心各地区発の成田行きの場合は、平日の夕方以外はほぼすべての便で60分程度で到着していることがわかります。ウェブ上の時刻表では所要90分前後となっていますが、それくらい時間がかかる便は全体の数%にも満たない程度ということもわかります。いっぽう成田空港発の場合は一定の傾向がなく、90分程度かかる便もそれなりにあることもわかります。
ただ、せっかくのこの情報も、ウェブ上ではわかりやすい場所にはありません(→ぜひ、探してみてください)。ほとんどの利用者は、時刻表に示された「所要90分程度」という情報しか見ていないのではないかと思います。
これはとてももったいない。
時間帯ごとの所要時間データは、言ってみれば企業のノウハウの一部でもあり、あまり出したくない、というのもあるかもしれません。そのせいか、この所要時間を示したグラフのサイズは小さくて、一般の利用者からするととても見にくいのです(傾向はわかりますが、個別の具体的な数値は出していません)。
グラフはまあ小さくてよいとしても、たとえばウェブの時刻表上に、ダイヤとは別に「空港行きの場合は、平均所要時間60分程度で到着」などと示したり、過去所要時間のグラフへのリンクを各路線の時刻表の脇につくったり(いまは、それすらない)など、この種のデータはもっと積極的に活用されてよいと思います。利用者の側のいわば「情報活用リテラシー」も、随分と上がってきていると思いますし。
多くのBRT導入都市(成功したとされる都市)での共通点として、市長などの当局者の強力なリーダーシップの存在が指摘されています。クリチバのレルネル元市長や、ソウルのイミョンバク前市長(現大統領)の名前はよく出てきます。ただ、これからBRTを導入する場合では、個人としての強力なリーダーの存在がBRT成功の必要条件だ、といえばそれは本質ではないのでしょう。一般的な鉄道計画や道路計画と BRT計画との根本的な違いは、道路管理当局・都市計画当局・公共交通の規制当局、そして交通管理者(警察)どうしの連携がとても重要で、それによってはじめてよい計画の策定と高いパフォーマンスの運用が可能となることです。これらの当局者が一体となって建設的な仕事ができるのであれば、強力なリーダーは後からついてくるのかもしれません。ケニアでは、どこに行っても、関係者の多さ(”so many stakeholders”)を行政当局者の誰もが問題としてすぐ口にします。行政の組織改編がいろいろ実施されていると聞いています。このあたりは是非、ケニア自身の手で解決していって欲しいと思います。
ナイロビについて言えば、見かけだけのサルマネBRT計画になってはいけないということに尽きます。関係者の連携ということに少し重きを置きすぎた記述となりましたが、構想の具体化にはほかにも大きな課題があります。ネットワーク計画や交通運用計画ももちろん大事ですが、それ以前の課題として、どのような政策目標(複数)を設定して、かつそれらの優先順序をつけるかです。そして難しいのは、想定する利用者層です。
交通量のおそらく3分の2を占める自家用車の抑制を主とするなら、全世帯の約1割の自家用車保有世帯と、自動車保有予備軍が対象となります。要するに高所得者層で、車(日本の中古車ですが)も買えれば、1リットル110円程度のガソリン代も問題なく払える人々です。彼らは、セキュリティの観点からも、CBDの中のほんの短距離の利用でも車を使います。一方で、ナイロビの人口のおそらく半分は、バスやマタツに乗るお金(1乗車で約60円)も惜しい低所得者層で、多くは何キロも歩いて通勤しています。夕方、工場地区からスラム地区まで、延々と歩いて帰る人の途切れない列が続くのをみましたが、これは壮観です。交通計画としては、現状のバス・マタツの利用者の単純なシフトを想定するのが簡単ですが、でもそれではナイロビの問題は解決しません。ここは、私もまだ確信を持てずにいるところです。
<スラムを遠くから>
都心方向の道路容量が交通量に対して小さいことは現実に大きな問題で、現に多くのプロジェクトが進行中で、現地の関係者もこのことを指摘します。しかし、よりクリティカルなのは、都心が受け入れ可能な自動車容量の方のように思います。ナイロビは、都心そのものはそれほど面積としては大きくありません。その都心は、まずビジネス街・官庁街は緑も多く、うまく整備をすればさらに魅力的な空間になり、文字通りアフリカを代表する都市になる風格を備えています。またダウンタウンもとても活気があります。ところがいまは、そのさして広くはない都心を、道路を走行する車と駐車車両、客待ちのバスとマタツ、そして路外駐車場が埋め尽しています。このままでは、ナイロビの交通機能よりも先に、都心機能がマヒするように思います。交通混雑の問題を、容量拡大をベースとした交通問題としてだけ扱うべきではないと思います。少なくとも、都心流入部の<見かけ上の>顕著なボトルネック(いくつかのラウンドアバウト交差点)の除去だけでは、問題は短期的にすら解決しないと考えるべきです。
その意味で、ナイロビのBRT構想の主たる位置づけは、都心への流入交通の抑制と、魅力ある都心空間(低所得者層が多く集まるダウンタウンも含めて)を作り出すための手段とすべきだ、というのが現段階の私の直感です。BRTが想定すべき利用者も、これをベースに考えるべきというのが、これも現段階の直感です。
マコリさんの調査では、調査の実現性などから、内容はあくまで交通に限定して、対象者は自家用車利用者とバス・マタツ利用者に限ってはいますが、上記への拡張はこれからの課題です。
※以下、写真を数点。
<郊外で進む道路改良>
郊外に限らずですが、低所得者層の密集住宅街(不法占拠ではないという意味ではスラムではない)と、高所得者層の緑の多い戸建て住宅街が、ところによってはモザイク状に分布しています。郊外に向かうと、幹線道路から一歩入るところにところどころ密集住宅街があり、中・高所得者層の集合住宅やエステート(住宅街)は、幹線道路沿いよりも、そこから数キロ入ったところに点在しています。BRTにするとしても、かならずしも幹線道路沿いに人口が張り付いていないケースが多いので、このあたりの設計(乗継バス?パークアンドライド?・・・)がとても難しそうです。
ナイロビの激しい交通渋滞の元凶はラウンドアバウト(ロータリー)。というのが、衆目の一致した見方のようです。研究者からもケニアの道路管理者からもそんなコメントは何度も聞きましたし、ガイドブックにさえもそんなコメントがあります。いままでずっとこう指摘され続けているにもかかわらず、私が見聞きした限り、交差点改良の事業(大してお金がかかるわけではない)が行われた形跡はありません。
<ラウンドアバウト>
交通工学的に見ると、ラウンドアバウトは信号交差点に比べて、交通量が大きくないときは(信号待ち時間なく一時停止だけであるため)所要時間は短くなる利点があるが、交通容量そのものは数割程度落ちるとされています。流入交通量が交通容量に近い状況だと、ほんの数%の交通量の増加で渋滞が加速度的にひどくなる、というのが交通工学の常識ですから、ナイロビのような交通量では、ラウンドアバウトはメリットよりもデメリットの方がずっと大きく、渋滞のボトルネックになるのは明らか、ということになります。
技術的にはその通りなのですが、事の本質はもっと根深いように思えます。まずこのラウンドアバウトでの交通制御ですが、交通量が少ないときは、イギリスとほぼ同じで、全ての方向(多くの場合4方向)から車が順次ラウンドアバウト内に流入してきます。問題は混雑時で、交差点の全ての流入口に立っている交通警察官がマニュアルによる交通制御を始めます。このとき、同時には1方向のみしか交差点に流入させません。つまり、4枝交差点(十字路)であれば、信号1サイクルにつき4現示ということになります。これでは、信号交差点に比べて交通容量はほぼ半減です。さらに問題なのは、警察官が何らかの原則に沿って制御しているようにはとても思えない(警察官の気分?)ことです。交通渋滞を引き起こすために警察官が存在しているかのようで、こんな警察官が各交差点にほぼ必ずいるので、市街全体ではとても多くの交通警察官がいることになります。警察官は、取締りにはとても熱心にみえますが、円滑な交通流の実現という意識は、すくなくとも現場には無いようにさえ思えます。もっとも、渋滞がひどくなるとドライバーはてんでバラバラな振る舞いをするので、そのようなカオスな状況を防ぐ、という意味の効果は確かにあるのですが。ナイロビでは、他の途上国と同様に運転ルールやマナーは???ですが、警察官の指示にはきちんと従います。
<進むのは1方向のみ>
<交差点の警察官>
要は、道路管理者と交通管理者(警察)の連携が現状では全く出来ていません。ケニアの道路管理者と話をすると、ラウンドアバウトがボトルネックとは皆が言うものの、交通制御がよくない(警察が悪い)とは自分からは言い出しません。数人のキーパーソンと話しただけですが、どうもこれはセンシティブな問題とみました。ちなみに交通警察は、国の直轄だそうです。
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